オホーツク文化と自然資源の結晶、知床
こんにちは、家庭教師みつけ~るの荻原です。
今回は日本の世界遺産について詳しく見ていきたいと思います。みなさん、日本にはいくつ世界遺産があるか知っていますか??
なんと25個も認定されています!(2022年現在)
今回は知床について学んでいきたいと思います。
世界遺産への登録の経緯
知床は北海道の東部に位置する半島です。半島の中央部から知床岬までの陸地とその周辺海域が世界遺産に登録されています。登録面積は陸地48,700 ヘクタール、海域22,300 ヘクタール、合計で71,100ヘクタールです。
知床は先史時代から人々の営みがあり、狩猟・採集によって生活をしていました。10世紀頃にはオホーツク文化が形成されます。明治時代に入ってから開拓がはじまるものの、厳しい自然環境からその影響は最小限に留められ、手つかずの自然が多く残りました。
1960年代に入ると道路整備などが始まりますが、自然保護の動きによって1964年に国立公園に指定されます。1980年に遠音別岳原生自然環境保全地域、1982年に国設知床鳥獣保護区、1990年に知床森林生態系保護地域が指定されます。美しい自然が守られた結果、2005年に世界自然遺産に登録されました。海洋を含む世界遺産は日本で初めてです。
世界遺産に登録された理由
世界遺産の登録基準は以下の10条があります。
- 人類の創造的才能を表現する傑作。
- ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
- 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
- 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
- ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
- 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの。
- ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
- 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
- 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
- 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。
知床は9,10の基準を満たしています。どのような点が評価されたのか、わかりやすく見てみましょう。
①海洋生物と陸上生物の関わりによって生まれる生態系
知床周辺の海は海流や流氷の影響により、プランクトンが豊富です。プランクトンは小魚の餌となり、小魚はさらに大きな魚や海獣、海鳥の餌となります。豊かな海で育ったサケは産卵のために生まれた川を上っていき、ヒグマなどの陸上動物に食べられます。陸上動物の排泄物や死骸は豊かな山や森を育てます。そこで生まれた栄養素は、川を下ってまた海へと戻っていくのです。
知床の食物連鎖は、海洋生物と陸上生物とが関わり合うことによって、特有の命のサイクルを生み出しています。
海―川―山でつながる食物連鎖と、それによって生み出される多種多様の生態系は、今後も守られるべきものとして高く評価されています。
②豊かな生態系と絶滅危惧種
古来の生態系が維持されている知床は、シマフクロウやオオワシなどの絶滅危惧種の生息地となっています。
知床には多種多様な生物が生息しています。ヒグマ、エゾシカ、アザラシなど大型動物の密集地としても知られ、密集度は世界レベルです。植物は、固有種であるシレトコスミレやシレトコトリカブトなどが生息しています。また、エゾモメンヅルやラウススゲは、日本では知床のみに生息しています。
③自然保護の充実
知床では豊かな自然を守るために様々な保護管理体制を整えています。例えば、「知床世界自然遺産地域科学委員会」は科学的な視点も取り入れた自然保護を行っています。「多利用型統合的海域管理計画」では漁業と自然保護の両立に取り組んでいます。「知床エコツーリズム推進協議会」では、自然保護と観光・レクリエーションの両立に取り組んでいます。
世界遺産登録にあたり、自然を良好な状態で保つための努力や、自然との共存を目指す姿勢も評価されました。
知床半島とは
知床半島は北海道東部に位置する半島で、長さ約70km、幅は基部で約25kmです。半島の中心部に連なる知床連山は火山活動によって形成されました。半島の西側には断崖絶壁が連なり、人の手が入ることがないことから絶滅危惧種のケイマフリの繁殖地にもなっています。
知床は1月頃になると、オホーツク海から大量の流氷が流れ込みます。流氷には豊富な栄養分が含まれており、氷が溶け始めるとプランクトンが大量発生します。これによって知床の独特かつ豊かな生態系が生み出されています。
知床には人々の営みもあり、旧石器時代の遺跡が残っています。10世紀頃にはオホーツク文化が芽生えました。チャシコツ岬上遺跡の出土品から、ヒグマなどの動物に神聖を見出す独自の精神文化があったことがうかがえます。
近年では自然を観光やレクリエーションに活用し、魅力を発信することで自然保護を目指す「エコツーリズム」が進められています。知床五湖、カムイワッカ湯の滝、プユニ岬などが人気のスポットです。
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